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January 06, 2006

1月5日 現代神秘学

正月はうちにずっといて
事務所回りしか歩いていない気がします。
お歳暮にいただいた
鮭や蟹、ローストビーフなどのごちそうを訪れてくれる友人たちと
食べては原稿、などという日々でこの冬、太ってしまったかもしれません。

これはまずいとは思っているのですが
ダイエットなど無縁の生活をしてきた僕、
残してはならぬと作ったものは全部たいらげてしまう癖があるのです。
いかんですな。


そんな毎日なんですが
またまた古書店で面白い雑誌をゲット。
「現代神秘学」という雑誌です。

sinpi

この雑誌の存在は高校時代には聴いたことがあったし
目にもしていたのですが、なにしろ当時から数が少ない品だったので
お小遣いで買うのははばかられていたのですが
みなさんのおかげで多少懐に余裕がでてきた今では、
今回は5千円という値段もなんのその、エイヤとばかりに大人買い。
128ページの薄いボリュームなんですが、
ダイアン・フォーチュンの『神秘的カバラ』やブラバツキー夫人の『神秘学への道』、
リードビーターの『神秘的人間像』、シュタイナーの『神智学』などから一部が訳出されているという気合の入った冊子。
70年代日本の神秘思想熱を感じることができる出版物です。

今だったら安価にネットのページでやるようなことなんでしょうが
当時はほとんど同人誌に近い、こういう冊子をつくるよりほかに
小部数のメデイアがなかったんですよね。

ブラバッキーとはもちろん、神智学の祖。
リードビーターは、毀誉褒貶はあるものの、
神智学協会を一時ひきいた人物。
そして
フォーチュンは、現代的なかたちにカバラをつくりかえ、公開した
有名な女流魔術師。

オカルトを志したりオカルト運動史に興味のあるものなら、
絶対に避けては通れない人物です。
現代魔法の最高の指導者といわれる故W.E.バトラーは「神秘のカバラ」を指して
「万難を排して入手すべき書物」なんてあおっていたものですから、
高校生だった僕にはこの本はまさに幻の一冊でした。

当時はまだ、国書刊行会からフォーチュンの「神秘のカバラ」(大沼忠弘訳)は出ていませんでしたから英語もおぼつかない当時の僕には、たとえごく一部でも翻訳が掲載されているこの小冊子が唯一の手引きで、喉から手が出るほど欲しかったのを覚えています。

この本は、現代魔法カバラの基本である、「生命の木」(カバラの宇宙図)を構成する
10個の球体(セフィラ)の象徴を詳述したもの。
魔術カバラでは、宇宙のあらゆるものをこの生命の木の球体(とそれぞ結ぶパス)に当てはめて分類整理し、内的世界を探求するための地図とします。
ここには世界中の神話などが配当されるのです。

たとえば、ここにはその一例が出ています。
近代魔術カバラの非常によくまとまった解説のページです。
http://homepage3.nifty.com/know-thyself/imn/tree/tree.html
もっとも、こうした照応は19世紀の終わりの、ユダヤ教徒でもない
近代の魔術カバリストが作り上げたもの。
ゲルショム・ショーレム博士をはじめとする正統的なカバラ研究者は
まったく相手にしないものではあります。

タロットと生命の木の対応などといえば、学者は噴出してしまうことでしょう。
しかし、それは新しく生まれた豊穣な象徴体系だということもできます。
少なくとも、心理学的には意味があると思うのです…
などと、いまは小ざかしくいうことができますが
10代のころの僕は本当にこの象徴の鍵が欲しかったのですよ…。


しかし、これを古本屋さん(場所は意地悪だからいわない!)
アレイスター・クロウリーの著書のドイツ語版があったり、
なんだかものすごい品揃え。
いったいどんな人がこんな本を持ち込んでいるんでしょうか?
秘儀への探求の夢破れた人物?
あるいは、秘儀を収め、書物などもういらなくなった達人?
研究対象を変えた学者?
あるいは故人の遺品で価値がわからず散逸?

なんてのは、妄想はひろがるばかりです。

Posted by 鏡リュウジ  書籍・雑誌 |