2月22日 見えない学生
おととい、久々に母校のICUを訪ねました。
武蔵野の林のなかにある、広大なキャンパスは
いつたずねても気持ちがいい。
あいにくの雨、といわれたんですが雨に濡れそぼる
母校もまたいいもので。
入学案内に掲載する卒業生インタビューを依頼されたのですが
僕のようなアヤシゲな仕事をしている人間が卒業生の「顔」の
一人になってしまっていいのかどうか、悩むところではありますが
ま、僕のような妙な仕事をしている人間もちゃんと受け入れてくれる
母校の懐の深さに感謝しつつ、少しばかりキャンパスを散歩。
ゼミ室の前の掲示板には、読書会やセミナーの案内があるのは
ずっと変っていないのですが、びっくりしたのはその内容。ジェンダー論や
クイア・スタデイーズに大きなインパクトを与えた、
ジュデイス・バトラーについての読書会や
ほかの学会の案内では「沖縄の女性シャーマンの霊的語りについての人類学的報告」なんてものもあったりして。軽い衝撃を覚えました。
隔世の感がありますな。
もし僕が、こんな環境で勉強していたら、あるいは
そこに目が開かれていたら、違う道があったのかもしれませんね。
いやいや、愚痴をいっているだけではありません。知をめぐる流行というか
状況が変ってきたということなんでしょう。
だって、当時は
また、妖怪研究で業績をあげられてきた
小松和彦先生のことを「あの人は学者なのか」と
困惑げな顔で聞いてきた教授もいたくらいですから。
漠然と僕が感じてきたユングの保守性や危険性についても
ようやくきちんとしたかたちで語れるかんじだし。
(当時は全否定か肯定だけ、という雰囲気だった)
ジェンダーやクイアといった概念はほんとうに周縁的だったし。
逆をいえば、このような状況のなかで、本当に自分が勉強したい、
あるいは考えたいといったテーマについての
場がない、という人も見えないところでいるということなんですよね。
自分が抱えている関心が何か、そこにかたちすら与えられない
見えない学生、学徒たち。
僕は錬金術の伝統でいう、「見えない学院」を求めてきたつもり
ではありましたが、逆に、見えない学生たちというイメージが大学の掲示板をみていて
浮かんできました。
僕には何もできないけれど、そんないまだ「見えない」学生・学徒たち、
将来のパイオニアたちがどこかにいるということには、せめて目だけは開いておきたいと
思います。それは年齢や地位や立場などは関係なく、僕の隣にいるのかもしれない。
そう思うと、なんだかワクワクするではありませんか。
さてさて今日は最近出た文章や本についてのご報告。
先日お話した茂木健一郎先生との対談は、今発売中の『オール読物』誌に
掲載されています。
また、プチグラパブリッシングから出た『あたらしい教科書 学び』という
アンソロジーにも、僕のインタビューが。
哲学について池田晶子さん、写真について飯沢耕太郎さんが語る、というような
学びのための学びの本なんですが、ありがたいことに「占星術」について
僕が語らせていただいています。こんな本のなかに占星術がとりあげられるようになったのかと感慨が深い。
また、スタジオボイス別冊から『皆既日食ハンターズガイド』というユニークな本が出ました。今年3月29日にアフリカで見られる皆既日食にあわせた出版。
日食観測に出かける人、エクリプスハンターたちのための総合的なガイドブックです。
このなかに、僕も「エクリプス・ハンター」として登場。プトレマイオスや
リリーなど歴史上の占星術家たちが日食をどんなふうに解釈したかを
解説した『黒い太陽』(初収「ユリイカ」)というエッセイを掲載していただきました。
「占い」そのものだけではなく、こういう仕事もみていただけるとうれしいなあ。
明日は、朝日カルチャーセンター新宿での講座。
月をめぐるシンボリズムについてのレクチャーの予定です。
すでに120名もの方が申し込んでくださっているとのこと、
準備しなくちゃ。
Posted by 鏡リュウジ | 固定リンク
















