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December 18, 2006

12月18日 金子勝先生のお話を伺う

今日は、某男性週刊誌のための対談。
男性週刊誌としては珍しく、大きな規模で「星占い」の記事を組むことになりました。
男性は占い記事には慣れていないということもあり「わかりやすく」やってほしいという編集側のリクエストがあったのですが仕事運がいいとか悪いといった話だけだとせっかくページ数をいただけるのにつまらない、だれか意外で面白い、読者が共感できるような方とお会いできないだろうか、と編集部の方にご相談。そうしたら、経済学の金子勝先生をセッテイングしてくださいました。

占いなどという非合理的な話なんかと一蹴されるかとびびりながら出向こうとしたのですが…はっと気がついて書棚から取り出したのが岩波新書から出ている『逆システム学』という本。やはりそうだ。この本、金子先生のご著書だった!!
生物学者の児玉龍彦氏と共著のこの本は、市場と生命のしくみを重ね合わせながら、部分の要素と全体の系との間の関係を考え直そうとする大胆で面白い本です。
この本は刊行されてすぐに興奮しながら読んだことがあったのですが、失礼ながら、テレビで拝見していた金子先生と著者名が重なっていなかったのです。

経済の動き、生命の動き、そして気象の動きなどを同じパラダイムで記述可能にする説く大胆な射程をもつ学問はすでに存在しています。
ひところから話題になった「複雑系の科学」やそのルーツとなるカオス理論がそれです。
金子先生や児玉先生によるこの本では、複雑系の科学でもうまく説明されていないと(著者たちはそう主張する)、個々の要素と全体との間の「多重フィードバック」のしくみを分析対象にするといいます。

数学に弱い僕にこの本がきちんと理解できているかどうかは自信ありませんが、生命と市場のうごきが重ね合わせて説明しようとするこの本にはすごく興奮させられていたのです。

そもそも、個々の要素にいろいろなものを分解していくことで全体を解明しようとする「要素還元論」はこれまでの科学で強力な武器でしたが、そのやりかたでは気象や生命、意識、社会、経済といった複雑な現象を説明することは難しい様子。

かといってシステムこそが個々の要素を理解することが必要とする全体論はあまりにも扱う対象が複雑になってしまう。個を理解するには全体を理解しなければならないけれど、全体を理解するには個を理解するほかない、というジレンマに陥ってしまうわけです。さらには、自然界の現象とちがって人間の場合にはフィードバックシステムに、故意に介入することが可能でそのことがさらに事態を複雑にしている。しかし、だからこそ救いもある。システムを維持するために効果的な介入の道筋を、このモデルなら考えることもできるのではないか、ということでしょう。

僕の浅い理解では、金子先生がかねてから提唱されている「セーフテイネット」も、このモデルから出てくるのだと思う。

この本では、抽象的な理論ばかりではなく、出てくる事例も面白い。
たとえば。
「逆説的だが、資本主義市場経済の初期ほど、家族や共同体を不可欠の前提としていた。それらが失業者や働けなくなった高齢者たちのプールの機能を果たしていたからである。1980年代に、市場原理主義的な考え方に基づいて民営化や規制緩和政策を大きく進めたイギリスのサッチャー首相が、同時に『ヴィクトリア時代の美徳に返れ』と主張したことは象徴的である。逆を言えば、市場が家族や共同体を解体していけばいくほど、市場はより複雑な調節制御のしくみを必要とするようになる」(同書67ページ)
なんて。

これって、今の日本の状況となんとなくだぶって見えませんか?
規制緩和が進んできた状況と、家族価値、共同体価値を再評価しようとする道徳的メッセージをはらんだ「スピリチュアル」なものが喧伝されるようになったことのシンクロを僕はここに幻視してしまうのです。

こういう刺激的な本を書いておられる方とお話できると思うと、急にワクワクしはじめて、対談場所のホテルへと赴いたのでした。
はたせるかな、話は盛り上がってお約束した二時間があっという間にすぎ。
掲載されたらまたご報告しますね。

それにしても、占い的な世界観のベースにあるのは目的論的思考。ユングの元型ー個性化モデルやゲーテの形態論、古くはプラトニズムといった系譜に連なる世界観です。
それにたいして複雑系、進化論といった世界モデルは(「自己組織化」などという用語を使っていたとしても)、非・目的論的世界です。
世界の理解としては両者はまったく異なります。
自分が依拠している世界観とはまったくことなる世界観やモデルを読むというのは混乱させられるけれども、刺激的。
木星が射手座の今、この本、面白いからぜひ読んでみて。対談も楽しみにしていてくださいね。
もちろん、星占い部分も。

そうそう、あと掲載誌。
マガジンハウスBOAOでは特別別冊。
婦人画報では四十代以上向けの占星術。
HANAKOではラブ・ボルテージとフランス人占星術家との対談、そしてうちのコレクションの一部をお披露目。

VOUGUEではスーザン・ミラー氏との競演ですし、もうすぐ発売のVOCEでは東洋占星術のプリンス、昇龍さんと対談をしています。

あちこちの雑誌でやっていますからぜひごらんくださいね。

Posted by 鏡リュウジ   |