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April 20, 2009

4月20日 ガリレオの占星術

NHKの週刊ブックレビュー、ご覧いただけましたか?
お勧めの1冊に渡部潤一先生の『ガリレオが見た宇宙』を取り上げました。
今年は世界天文年。ガリレオが初めて望遠鏡で宇宙を見たことを記念して世界中でさまざまな天文イベントが開催されています。
近代的な天文学の誕生をガリレオが切り開いたことを祝して、です。

Qa_galileo

ところが、文化の発展というのはそんなに直線的なものではありません。
多くの科学者にとっては頭の痛い話でしょうが、近代天文学の父であるガリレオは、れっきとした占星術家でもありました。
岩波文庫にも入っている、『星界の報告』を開いてみましょう。
ガリレオは、自分のパトロンでもあるメデイチ家のコジモ二世への献辞から、この偉大な本の幕を開けています。
そのなかに、こんな文章が出てくるのです。
「慈しみ、心の温かさ、物腰の柔らかさ、王家の血統の正しさ、行いの重々しさ、他者への権威と支配の広大さ、こうした徳がすべて、一切の善の源泉である神のつぎに位するユピテルの星から流れ出ていることを、知らないものがありましょうか?」

ユピテルとはジュピター、つまり木星のことです。
占星術では大吉兆の星であり善の象徴でした。
ガリレオは続けます。

「ユピテル、ユピテルこそ殿下のご生誕のさい、すでに地平の濁った蒸気を通り過ぎて中天に位置し、王宮にあって東方を照らしていました」。

もちろん、これはコジモ二世の出生ホロスコープのことを言っています。
ガリレオ自身が作成したコジモ二世のホロスコープでは、ガリレオがいっているように木星が天頂にあります。
そして、この日本語訳ではわかりにくくなっていますが原文のラテン語を見ると、アセンダントの支配者である木星が天頂にある、という意味に受け取れます。
そう、コジモ二世のアセンダントは木星を支配星とする射手座でした。

岩波文庫版の訳注を見ると、この部分は伝統的な献辞の作法にのっとっているだけで、ガリレオが本気で占星術を信じていたわけではない、とあります。
星占いを使ってガリレオがパトロンにおべっかをつかっただけなのだ、と。
しかし、本当にそうでしょうか。
ガリレオは自分自身のホロスコープや、また自分の娘のホロスコープも作っています。
それに伝統的な占星術の方法論を使って解釈、コメントもしています。
貴族からの資金を得るためだけにホロスコープを作っていたのだとすると、自分の娘などのチャートを面倒な思いをして作るでしょうか。
確かに『対話』などのなかには占星術家を後智慧ばかりの愚か者と揶揄している部分もあるそうですが、しかし、その一方でガリレオは「宿命論的な占星術を行っている」というかどでも異端審問にかけられてもいるのです。
とはいえ、鬼の首をとったように、ガリレオだって占星術を信じていたんだから「信じなさい」といいたいわけではありません。
ただ、占星術という文化の豊かさを理解していただきたく、こんなことを申し上げているのです。

そういえば、もうすぐ公開されるダヴィンチ・コードの続編
(正確には前篇)『天使と悪魔』でも
ガリレオは重要な役回りを果たしています。
今年はなんだかガリレオが「来そう!」な気がしています。

Posted by 鏡リュウジ  文化・芸術 |