« 5月15日 ストリート占い師ユニットくんたちに先輩面する一夜 | Main | 5月20日 怪しい四者会談、荒俣さんを囲んで »

May 18, 2009

5月18日 阿修羅と星とジュエリーと

占い師ユニットくんとの出会いの興奮の余韻をひきずったまま、
今度はぼくの憧れの(若者なら「リスペクト」っていうんでしょ?)
先生方と夢の鼎談。

鶴岡先生の最近のご著書、『阿修羅のジュエリー』を題材にお話をさせていただきました。
現在、東京にやってきている阿修羅はユーラシア大陸を結ぶ、東西文化の融合が生み出した壮麗な文化遺産として見る必要があります。
かねてから僕もいっていますが、奈良や京都は「日本」文化の象徴などといったちっぽけなものではありません。
それはヘレニズム文化の夢の結晶であり、東と西の偉大な文化のアマルガムでもあるのです。
鶴岡先生のご著書にはわかりやすくそのことが語られています。
また中沢先生は、人類学者としてさらにその射程を広がられ、ロシアとインドを結ぶ回路、さらに北米インデイアンの文化の神話と阿修羅の履物との象徴的なつながりを指摘されました。

さて、僕に与えられたお題は阿修羅とつなげての「星と宝石」でした。
そこから浮かび上がる重要なテーマは二つ。
東西文化のアマルガムとしての宝石占星術。これは歴史的、空間的な系譜と広がりの広大さです。
そしてもう一つは星と石のもつ元型的な同一性。こちらは「魂のなかのイメージのつながり」。
詳しくはお話できませんが、面白いところでその双方を象徴する伝説をとっかかりとしてご紹介しました。

それは「アレクサンドロスの物語」。ヘレニズムの大帝国を築き東西の行路を一気に開いたアレクサンダー大王をめぐるフィクショナルな伝記、伝説が紀元前3世紀ごろからたくさん語られ、翻訳されています。
そのなかの一つの逸話に、アレクサンダーの母親がエジプトの占星術家ネクタネボにホロスコープ作成を依頼するというものがあるのです。
占星術家は、外套から豪華な板を取り出してきます。
黄金、象牙、黒檀、銀でできたその板には12の星座宮や36のデカンを基にしたブランクチャートが描かれていました。
さらに、占星術家にして呪術師ネクタネボは象牙の宝石箱を取り出し、そこから8つの宝石を手に取りました。
それは7つの惑星とアセンダントを象徴するものでした。
底本によって若干の異同はあるものの、クリスタルは太陽、ダイヤは月、火星はヘマタイト、エメラルドは水星、サファイアは金星・・・などという対応です。
そして占星術家は、アレクサンダーの母とその夫の星の配置をこの宝石で板の上に再現し、この二人の間には神のような子供が生れると予言するのです。

宝石細工のホロスコープ!なんと壮麗なイメージでしょう。
歴史的な考証をすれば、もちろん、これは後代のフィクションであり、
アレクサンダーが生れる時代にはこのような
占星術が存在していた可能性は低いわけですが
人びとのイメージのなかで、アレクサンダーというオリエントへの道を開いた英雄の誕生に、やはりオリエントからのきらびやかな光の象徴であった宝石がおりなすホロスコープが存在していた、とまことしやかに語られているというのは実に象徴的。

いま、流行している一見たわいない「パワーストーン」ブームのはるかな水脈は、こんな文化の交差路のなかにはじまっているのです。

Posted by 鏡リュウジ  文化・芸術 |