皆既日食の興奮がまだ冷めない鏡です。
いやぁ、あれは本当にすごい体験でした。
「日食、東京でもみれたよ」なんていう人もいますが、
声を大にして言いたいのは、皆既日食と部分日食とは
まるっきり、異なるものだということです。
宇宙のスケールの奇跡的な偶然で、
地球から見ると太陽と月の視直径がほぼ同じになっており、
更にその軌道の配置から起こるのが皆既日食。
月が太陽を隠し、そのためにふだんは見えないコロナが見え、
「黒い太陽」が浮かび上がります。
もう少し月が小さかったり距離が違っていたら、単に夜になるか、
あるいは目立たない金環食となって
コロナやダイヤモンドリングは観測できなかったでしょう。
プラトニストのいう宇宙の設計者(デミウルゴス)の存在を
信じたくなるような幾何学的な調和の奇跡を感じます。
その周囲には星の夜空が広がり、はるか下の水平線には
夕暮れのような風景が広がります。
食が進むと、気温がぐっと下がり、海の色も深さを増してゆきます。
今回のクルーズ(「ぱしふぃっく・びいなす」という客船でのクルーズでした)にはNHKの中継も入っていたので、その奇跡の光景を画面でご覧になった方も多いでしょう。
今回の旅で「日食病」「日食貧乏」というものがあるということを初めて知ったのですが、こうした症候群に患してしまう人が増えるのもわかります。
国立天文台のHPでこのときの日食写真がアップされています。
http://www.pr-naoj.jp/eclipse2009img/
日食病というのにたいしてクルーズ病というのもあると聞きました。
これもわかりますね。
横浜から出た船は2日かけて目的地に向かいますが、その間、さまざまなプログラムがあります。
デッキでプールやジャグジーに入るもよし、
夜はバーで飲んだりカジノを楽しむのもよし。
行ってみれば、海の上を動く大きなホテルにいるようなものです。
料金は安くはないし、ぼくも一生こういうクルーズを体験することなどないと思っていました。今回、日食ということだったので思い切って乗ってみて、その良さがわかりました。
ま、ぼくは牡羊座に月があることもあり、
旅先ではあちこち歩きまわりたいタイプなので
毎回、船、というのはまだ早いかと思いますが
たとえばもう少し親が年をとったときに一緒に乗ってみるのもいいかも。
なにしろ、荷物を持ち運ぶ必要がなく、航空機のように狭い席にも閉じ込められず
目的地へと快適にいけるわけですし、サービスも満点なのですから。
今回の旅でのメインプログラムは、なんといっても、
日本を代表する天文学者の方々の講演を聞けることでした。
これだけの顔ぶれが集まるのはすごいこと。
僕が面白いと思ったのは、宇宙航空開発機構の的川泰宣先生による、
「糸川英夫と日本のロケット開発」というレクチャー。
糸川英夫という人物はご存知ですか?
「日本ロケット工学の父」と呼ばれる、
糸川英夫博士は実に多彩な天才でありました。
糸川博士なくしてはいまの日本の航空技術やロケット技術はなかったでしょう。
その名前は小惑星にもつけられています。
的川先生のレクチャーでは、ペンシル型のロケットを開発したときの工夫、
また、その途中での爆発事故などなど多くのスライドを使っての楽しいお話でした。
一方で音楽やバレエも自ら楽しまれ、独自の活動を展開。
そして、ぼくたちが恩恵をこうむっているのは
糸川博士がわかりやすいホロスコープ作成の入門書、
「糸川英夫の細密占星術」(1979年)「糸川英夫の未来占星術」という
二冊の本を出されていて、さらにアストロクラフトという、
ごく初期のコンピュータ占星術会社を
創設されていたということです。
まだパソコンが普及するずっと前のこと。
糸川先生のこの本格的な入門書は、今の現役占星術家を
生み出す大きな影響力になったのではないかと思います。
ぼくなども、高校に入ったころ
この本の巻末に掲載されていた参考文献の洋書を片端から取り寄せて
勉強したものです。
(小学校高学年のころに、はじめてホロスコープを
作ったのはこの本を使ってでした)
所用でこの講演の最後まではいられなかったのですが、
たぶん、糸川先生の占星術への関心については
ふれられてはいなかったのではないかと思います。
WIKiをみても今のところ、この占星術の入門書はアップされていません。
科学教育にはやはり、科学者と占星術のかかわりは
「噛み砕きにくいやっかいな石」なのかもしれません。
今思い返しても、ホロスコープの作成から、
続編では本格的なプログレッションの方法に至るまで
解説したこの本は画期的なものだったと思います。
やや専門的になりますが、『未来占星術』で紹介されていた
グラフを使ってプログレスのヒットの時期を出すという方法は、
「グラフィック・エフェメリス」という技法の先駆けです。
PC普及以前にこんな方法を「入門書」として
紹介していたというのはすごいです。
的川先生は、しかし、夜食の場で
お会いできたのですが、本当に上品で素敵な方でした。
僕が糸川先生と占星術のかかわりをお話した時も、
「ああ、『細密占星術』ね。広い関心をお持ちだったからなあ」と。
ぼくも緊張していて、糸川先生が一種のシャレ、
あるいは実験で占星術をやられていたのか
あるいは本気でとりくもうとされていたのか、そのあたりを
お伺いしたかったのですが、ちゃんと聞きそびれたのは残念でした。
それにしても一流の先生方のお話はいずれも素晴らしく、
内容もさることながらその話術にも引き込まれました。
ぼくは、渡部潤一先生と二人で「天文学VS占星術」
というテーマで45分ほど話させていただきました。
[VS」なんて挑発的なタイトルが
誤解を生んでしまったかもしれませんが、もちろん、
「対決」ではありません。
日食についての天文学的なメカニズムを先生が、
そして歴史のなかで日食、月食がどのように
占星術や絵画のなかで描かれてきたかなどを
僕のほうで説明させていただきました。
いやあ、本当にいい思い出ができました。
さて、告知です。
ただいま発売中の雑誌VOUGUEで
伊泉龍一さんとコラボして手相と占星術の掛け合わせの記事を提供しています。
そして、8月の富士見先生との講座もお待ちしていますね。
http://www.asahiculture-shinjuku.com/LES/list.asp?CACODE=0001-1&KeyWords=%8B%BE%81@%83%8A%83%85%83E%83W&x=46&y=11
8月8日には「癒しフェア」でも講演します。
さらに9月のロンドンツアー、ぜひお待ちしています。
http://ttravel.jp/ttour/0906/E09S100/index.html
最後になりましたが……。
豪雨の被害にあわれた方、心からお見舞い申し上げます。
日食帯近くのエリアだったというのが皮肉です。
そして、自然を大事にすることの大切さ、改めて身にしみています。