8月31日 フロイトのコレクション
ロンドンでのすべての打ち合わせが終わって最後の1日。
仕事の関係で一足先に帰るスタッフさんを空港へ送り、そのあとどこにいこうかと迷ったのだけれど、ロイヤル・アカデミー・オブ・アートで、ぼくのお気に入りの画家、ウオーターハウスの展覧会をやっていたのでとりもなおさず、そこへ。
ウオーターハウスは、19世紀末、ラファエロ前派の画家の一人で神話を題材にした幻想的な絵を数多く残している。
ぼくの監訳で出た『神々の物語』(ジュリエット=シャーマン バークとリズ・グリーン著、柏書房)のカバーを飾っているのも、このウオーターハウス。
海王星が発見されて直後に立ち上がったラファエロ前派。
その世界を堪能。
そのあと、カフェでサンドイッチをほおばっているときにふと思い出して、フロイト博物館へ。
実はまだここにはいったことがなかったのだった。
ナチ時代にウイーンから逃れてきたフロイトとその娘のアンナがすんでいた場所が博物館となって公開されている。
フロイトは、タバコとともに、古代の遺物のコレクションに取り付かれていたのだが、それがここに展示されているのだ。
エジプト、アッシリア、ローマ、中国、そうした古代の文明の痕跡であるたくさんの小さな彫像が、フロイトのデスクには並べられていた。
フロイトは、そうした彫像に語りかけながらペンをとってあの膨大な著作と書簡を残したのである。
フロイトにとって考古学の発掘は、精神分析のひとつのモデルになった。
古い精神の地層を掘り起こすことこそ、精神分析だったのだ。
2000にもおよぶ彼のコレクションはそんな「精神の考古学」としての精神分析の象徴でもある。
まるで博物館のように、古代文明の残り香を集めたフロイトの部屋には独特のマジカルな濃密な雰囲気が漂う。
ユングと違ってフロイトは魔術的なものを忌避していたとよくいわれるが、再現されたこの部屋を見るとそんなことはなかったという思いに強く駆られる。
フロイトの科学の深層には古代の宗教や魔術への強い思いがあったのだろう。
そしてそれを彼なりの「科学」の光のに照らし出してみた結果が「人間モーセと一神教」などに代表される壮大なサイコヒストリー、一種の神話だったのだ。
フロイトの部屋を思い起こしながら、もう一度フロイトも読み返してみよう。
また違う読み方ができるかもしれない・・・。
















