10月7日 タロットの文化史に新解釈
面白いタロットの本が出ました。
昨今、マイケル・ダメット、ロン・デッカーら実証的なタロット研究家たちによって、タロットの歴史的な実像に光が当てられてきた。
ぼくの『タロット こころの図像学』や伊泉龍一さんの『タロット大全』などはこうした研究家たちの仕事をもとにしたもので、日本でもタロットの歴史的な姿はずいぶん知られてきたと思っている。
そんな中、今年になってまた注目すべき書籍が出ている。
"A Cultural history of Tarot" by Helen Farley だ。
これはオーストラリアのクイーンズランド大学に博士論文として提出されたものを、まとめなおして本にしたもののよう。
タロットの起源、ルネサンスにおけるタロットの創世、オカルト化などを手際良く、また詳細にまとめたもので、やはりダメットやデッカー、キャプランの業績に多くを負っているもの。
しかし、一方で新しい視点もある。
注目したいのは、最古のタロットのひとつとされているヴィスコンテイ系のデッキを発注したのが、フィリポ・マリア・ヴィスコンテイであるとし、その人となりから最初期のタロットの図像を解読しようとしている点。
たとえば通例では「戦車」は、ルネサンス時期に流行した、ローマ風の凱旋を描いたものだとされているが、フィリポはこうした野外ページェントを好まなかったという。
凱旋車のようなものにのっているのは、美しい女性でありこれは一種、キリスト教そのものの擬人化であったのではないだろうか、というのである。
またライオンをこん棒で打ち倒す「力」は、獅子退治をするヘラクレスやサムソンではなく、フランチェスコ・スフォルザ本人を描いたものではないかと推測する。
スフォルザそのものが「力」を連想させる名前であるし、ミラノが敵対していたヴェニスの守護聖人は聖マルコであり、聖マルコを象徴するのは伝統的には獅子だからである、というのである。
こうした説が正しいかどうかは今後の検証をまたなければならないだろうが、最近でたタロット本では特筆に値するものだし、ファーレイは数少ない、タロット研究に携わるアカデミシャンであることは間違いない。
















